1 今、日本において、貧困と格差が急速に広がっています。そのような時代だからこそ、生活保護制度は、憲法25条1項に規定された「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するための最後セーフティネットとして重大な意義を持ち、また、有効に活用されなければなりません。
しかし、生活保護制度は、その違法・不当な運用が全国的に横行しているため、最後のセーフティネットとしての本来の機能を果たせていません。例えば、生活困窮者が福祉事務所の窓口を訪れても、生活保護の申請すら受け付けずに追い返してしまう窓口規制が行われています。また、生活保護を利用している人々には、理不尽な就労指導など、人としての尊厳を踏みにじるような厳しい締め付けが行われ、そのような指導に従わなかったことを理由に生活保護を打ち切られることもあります。
このような生活保護制度の違法・不当な運用により、生活保護制度を利用できなかった生活困窮者は、生命の維持すら脅かされることになります。 実際に、生活保護制度の利用を拒否された生活困窮者の餓死事件や自殺事件の報道は後を絶ちません。
生活保護問題は人の命に直結する人権課題なのです。それだけでなく、国は、財政難を口実に、生活保護費の削減を至上命題とした生活保護制度の改悪を押し進めています。具体的には、老齢加算の廃止、母子加算の段階的廃止、リバースモゲージの導入、生活扶助基準の削減などの最低生活基準の切り下げ政策を相次いで打ち出しています。
このような最低生活基準の切り下げは、憲法25条1項で保障された「健康で文化的な最低限度の生活」を侵害し、また、急速に拡大している貧困と格差を追認・固定化するものであり、決して許されません。
2 また、生活保護制度における最低生活費以下の生活を強いられている生活困窮者の中には、多重債務を負っている人も少なくありません。
そして、背景に貧困問題を抱えた多重債務者が、人としての尊厳ある生活を取り戻すためには、自己破産等による多重債務問題の解決だけではなく、生活保護制度などの社会保障制度を適切に活用し、安定した生活を確保することが不可欠です。
その意味で、多重債務問題に取り組んできた人々が、生活保護問題にも取り組むことは大きな意義を持つのです。
3 本会は、すべての人の健康で文化的な生活を保障するため、貧困の実態を明らかにし、生活保護制度の違法・不当な運用を改善するとともに、生活保護費の削減を至上命題とした制度の改悪を防ぎ、生活保護法をはじめとする社会保障制度の整備・充実を図ることを目的とし、
①貧困の実態に関する調査及び研究
②生活保護制度に関する法令・判例・理論・実務の調査及び研究
③生活保護の申請・審査請求・裁判に関する実務経験の交流
④シンポジウム、研究会、集会の開催
⑤弁護士会、司法書士会、民間支援団体等、貧困問題に取り組む諸団体との連携・交流
⑥宣伝及び国・地方自治体に対する諸要請活動
⑦書籍の執筆・出版
⑧生活困窮者間のネットワーク作りの支援
などの諸活動に全力をあげて取り組むことを設立の趣意とします。
(2007年6月3日 設立)