稽古では、相手の台詞を聴き、そこから自分の反応を生み出すことを大切にしています。
「次はこの台詞を言う」「ここではこの感情を出す」と先に決めてしまうのではなく、目の前の相手から何が起こるのかを受ける。
相手の言葉を生のまま聴き、その瞬間に自分の中で起こったことから、次の言葉や行動が生まれる。
台詞を「言う」のではなく、「聴いて、反応する」。
そのことを、実際の場面を稽古しながら取り組んでいきます。
3日間で、本当にできるの?
「チェーホフを4作品も?
3日間でできるの?」
そう思われるかもしれません。
ご安心ください。
今回扱うのは、長い場面を一本丸ごと仕上げるものではありません。
作品の中から抜粋した、文庫本で半ページ~2、3ページ程度の短い場面を中心に上演します。
これは、稽古期間が短いから仕方なく場面を短くしているということではありません。
一つの場面を丁寧に稽古し、人物同士の関係、言葉のやり取り、沈黙や反応まで含めて、その場を成立させることができれば、短い抜粋でも一つの舞台として十分に成立します。
演技は長さではありません。
その場を成立させることができるかが勝負です。
短い場面だから簡単なのではなく、短い場面だからこそ、その場面を濃密に演じる。
それが、このチェーホフ公演の考え方です。
上演する場面は、出演者の経験、人数、役の組み合わせなどを考慮して決定します。
特に演じてみたい作品や場面がある方は、お申し込み時にお知らせください。
チェーホフを演じたことがなくても大丈夫です
「チェーホフは難しそう」
「古典だから、特別な演技が必要なのでは?」
そんな心配も必要ありません。
チェーホフが描いているのは、特別な人間ではありません。
言いたいことが言えない。
好きなのに伝えられない。
相手に分かってもらえない。
会話をしているのに、なぜか噛み合わない。
過去を引きずりながら、未来をどうしていいのか分からない。
そこにあるのは、今を生きる私たちにも身近な人間関係です。
だから、チェーホフを演じるために特別な「古典演技」を身につける必要はありません。
必要なのは、まず相手の言葉を聞くこと。
そして、その言葉を受けた自分に何が起こったのかを感じること。
そこから次の言葉を出していきます。
演技経験の浅い方には、基本から丁寧に取り組めるよう進めていきます。
経験者の方にも、もう一度「演技」を見直す時間に
もちろん、経験者の方にも物足りない内容にはしません。
経験を積んだ俳優ほど、
「ここはこういう感情だ」
「ここは強く言う」
「この人物はこう考えている」
と、無意識のうちに芝居を先に決めてしまうことがあります。
それは決して悪いことではありません。
しかし、そこから一度離れてみる。
自分のプランを持ち込むのではなく、目の前の相手から何が起こるのかを待ってみる。
すると、すでに知っているはずの台詞から、これまでとは違うものが生まれてくることがあります。
初心者の方には「相手を受ける」という基本を。
経験者の方には、これまで身につけてきた演技を一度問い直し、さらに深いところへ進むための課題を。
それぞれの経験に合わせて取り組んでいただきます。
セリフを「覚える」のではなく、「生きる」
この公演の目的は、チェーホフの台詞を上手に言えるようになることではありません。
セリフは、最初から決められた感情を表現するためのものではありません。
相手の言葉を受ける。
その瞬間、自分の中で何かが変わる。
その結果として、次の言葉が出てくる。
セリフは、相手との間に生まれるものです。
だからこそ、短い抜粋を使って、一つひとつのやり取りを丁寧に掘り下げます。
言葉の奥にある沈黙。
言えなかったこと。
相手には届かなかった思い。
そして、相手の一言によって変化する人間。
そこにチェーホフの面白さがあります。
そしてそれは、現代劇や映像演技にも通じる、リアリズム演技の本質でもあります。
4作品から、さまざまな人間関係を体験する
今回の題材は、チェーホフを代表する4作品。
『かもめ』
『ワーニャ伯父さん』
『三人姉妹』
『桜の園』
それぞれの作品から短い場面を取り上げます。
作品ごとに異なる人物関係、言葉のすれ違い、沈黙、欲望を体験しながら、共通している「人間と人間が向き合う」という演技の核心に迫っていきます。
最終日には、照明・音響・舞台セットを備えた本格的な舞台環境で発表を行います。
3日間で「完璧な芝居」を作ることが目的ではありません。
稽古場で生まれたものを、そのまま舞台上で相手と生きてみる。
その経験そのものを大切にします。
こんな方におすすめです
- 演技を始めたばかりで、何をすればいいのか分からない方
- セリフを言うと、つい「演技をしている」感じになってしまう方
- 感情を作ろうとしてしまう方
- 相手のセリフを本当に受けられるようになりたい方
- 演技の「間」がうまく取れないと感じている方
- これまでの自分の演技を一度見直してみたい経験者の方
- 現代劇や映像演技にもつながるリアリズム演技を学びたい方
- チェーホフを演じたことがなく、一度じっくり取り組んでみたい方
新しい芝居の扉を、一緒に開いてみませんか。
チェーホフを学ぶことは、チェーホフだけを学ぶことではありません。
相手の言葉を受ける。
その瞬間に自分の中で起こる。
そして、次の言葉が生まれる。
その繰り返しの中に、芝居があります。
初心者の方も、経験を積んだ俳優の方も。
3日間、チェーホフの短い場面を通して、改めて「演技とは何か」を一緒に探してみませんか。